蒲谷敏彦KOREA REPORT '01.11月  


ソウルでも行く秋を惜しみつつ、日増しに寒さが加わって参ります。
いかがお過ごしですか?
瀬戸内の海の様子は如何ですか?
ヨットはまだ走っていますか?
会社の社長車の運転手さん(朴技士、こちらでは運転手さんをキーサ;技士と呼びます。)は、娘さんがアメリカでご結婚をされるとのことで、渡米されて今週はお休みです。
朴さんはベトナム戦争に出兵して、本当に人を撃ったという噂ですが、とても優しい人で私も何かの用の時に社長車に乗せてもらうときには、本当に親切に安全に運転してくださいます。
3人のお子さんはそれぞれアメリカでバイトをしながら留学されているとのこと。
こちらでは海外留学は珍しくありませんが、それでも3人全部とはすごい。
娘さんはイリノイ州でまだ勉学中ですが、炭そ菌事件やテロなど怖くはないのか?
 帰国されたら聞いてみたいものです。

今月もKOREA REPORT (11月号)をお送りします。

さて、サーカーの日本代表はイタリアと1−1で引き分けてワールドカップ本番にむけて祝賀ムードですが、
先日こちら韓国代表チームも前回のワールドカップ・フランス大会3位のクロアチア相手に2−0で勝ってしまいました。
クロアチアは有力な選手が来韓しなかったとか、いろいろ言われてはいますがとにかく堂々の勝利でした。
当日はソウル・ワールドカップ競技場のこけら落しで、試合前にはFIFA副会長の鄭夢準副会長の挨拶から始まって、パリ市長、横浜市長のメッセージの紹介、金大中大統領の挨拶や、人気歌手の公演などの祝賀行事もありました。
ブッシュ大統領が始球式をしたヤンキース球場でのワールド・シリーズ第3戦のニューヨーク・ヤンキース以上に、金大統領隣席の韓国代表としては、絶対に勝たなくてはならない(負けてはならない)試合ではありました。
赤の上着に青のパンツの韓国チーム、青の上下に袖が今ではおなじみ赤白の市松模様のクロアチア。
前半は0−0で折り返しましたが、後半20分前後に韓国が2点続けて左足と頭で得点しました。
同じ赤のユニフォームで一色に染まったスタンドは白い紙吹雪が延々と舞いました。

来年5月31日のワールドカップの開会式が行われるソウル市麻浦区(マッポク)上岩洞(サムアムドン)のワールドカップ競技場は3年の月日を掛けて先月竣工しました。
6万5千の観客を収容できる規模はサッカー専用施設としてはアジア一だそうです。
グラウンドの芝は寒さに強いケンタッキー・ブルーグラスというもので、早朝はもう−3℃にもなる寒いソウルでも鮮やかな緑色でした。
スタジアムのロビーの壁と床には江原道産の大理石を使い、大型電光掲示板には気象状況などの各種データが表示されます。なんと言ってもこのスタジアムの良いところは交通の便でしょう。
勤務先の最寄の地下鉄駅(堂山(タンサン)駅)からも乗り換え1回の4駅で行けます。
私のアパートからでも乗り換え1回11駅、約40分で行けます。
元々ここは、東京の夢の島のようなゴミ捨て山だったのを開発して一大スポーツ・コンプレックスにするようです。将来は水泳場やゴルフ場も近接して造られるそうです。地下鉄駅は今回新設されましたが、もとはゴミの山ですから、ゴミの中を走っていると思うと少し臭いような...(もちろんウソですが)

また、新しい話題としては競技場前の漢江に大噴水台を造ったことです。
88年のソウル・オリンピックの時には同じ漢江に架かるオリンピック大橋に聖火の大モニュメントを造って、夜ともなると赤いライトが輝いて今でも恋人達のデートコースになっています。
今回の大噴水台は高さ200mを超える水の塔にレーザービームを当てて、七色に輝くオラベスクを漢江の水面に現出させました。また新しいデートコースが出来たことは間違いありません。


写真;中央日報から)開場を待つソウル・ワールドカップ競技場。この周りを当日券を求めて行ったり来たり...

 と、ここまで見てきたように書きましたが半分ウソでした。
当日は朝10時にアパートを出て以前水原スタジアムのコンフェデレーションズ・カップのブラジルVSフランスと同じだと信じて当日券を買いに行きましたが、正午12時から売り出されるという当日券の売り場が良く判りません。
皆が並んでいるチケット販売ブースを3ヶ所もあっちこっち移動して、11時30分に並び替えた頃には延々と1キロ近くの列でした。
当日券は2000枚とか5000枚とか、そこの列は買えないとか、あっちでもう売り出しているとか、とにかくすごいデマ状態(韓国語が判ってもデマはデマ)で案内板や案内係員などは皆無で何がほんとやら判らない状態でした。
案の定、列の最初の人達に少し販売されたところで売り切れ(メジン)になり係員と買えなかったおじさん達が喧嘩してる、それを新聞記者のカメラマンが写真を撮っているという図になりました。

 ここからは万国共通、ダフ屋さんの独断場です。一番安い1万W(約1000円)の席も3万Wです。
やり手ババァそのもののようなおばあちゃん(ハルモニ)が客から金を貰うと、闇チケット(アン・ピョ)を客のポケットにさっと突っ込みます。
まるで麻薬の取引をしているようで、下手な韓国語で、『ピョ イッソヨ?(券ありますか?)』 なんて聞いても 『オプソヨ!(無いよ!)』 と相手にしてくれません。
周りには警察もボランティアの係員もウヨウヨしてますから、おばあちゃん達も必死なんでしょう。
地下鉄駅の出口では、券を買う専門(ダフ屋の一味だと思う)のおっさんが駅から出て来た人達に余った券はないかと、『パセヨ。パセヨ。(売ってよ。売ってよ。)』と声を掛けています。
何と言う供給と需要のマッチング。自由市場、資本主義、市場至上主義の縮図を見るような光景でした。
 
というわけで、新ソウル・ワールドカップ競技場は外から観てお終いでした。カッコワリー。
でも競技場横の麻浦市場は水産物と果物の本物の市場で、新鮮な秋刀魚や太刀魚、エイ、平目、生タコ、牡蠣などを売っています。
市場で魚を買って2階の食堂に持ち込むと、刺身や鍋にしてくれてそのまま食事ができます。
ここはお奨めです。(ダフ屋はいませんが呼び込みのお兄さんはスゴイ。手を引っ張って離してくれません。)

さあ、本番のワールドカップ観戦は万全の準備で臨みましょう。お早めにご予約をどうぞ。
それではまた、来月お話しましょう。

ソウルより 蒲谷