蒲谷敏彦KOREA REPORT  新春福袋号

KOREA REPORT (新春福袋号)

―――ルイヴィトン・カップ決勝観戦―――

 

韓国の日曜日朝9時といえば、オークランドでは13時になる。

アメリカズ・カップ挑戦艇を決定する、ルイヴィトン・カップの決勝戦が始まる。テレビをスターTVのスター・スポーツにすると、アリンギとオラクル・BMBがスタートラインにエントリーしたところだった。私のアパートでは共同受信アンテナから、韓国衛星放送、NHKアナログ衛星放送(BS1BS2)、そしてこの香港衛星放送のスターTVが見える。今朝は生中継でルイヴィトン・カップが見えるというので、日曜にしては早くから起きて今か今かと待っていた。

 


ソウル駐在2回目のソニーのテレビ

遠くニュージーランドのハウラキ湾では、トダイ(トゥデイ:現地NZのアナウンサーなのでNZ訛りがある。サンデイはサンダイになる)は、ベリー カンファタブル ウィンドウズでビューティフル セーリング コンディションのようである。(と、解説者が言っている)

 

以下皆さんとライブでレースを見てゆきましょう。

(そんな気持ちでね)

 

    

スタート前のガマン比べ  マニューバリング開始  3DCGによる解説


スタート5分前からレースは始まる。如何に相手の後ろを取ってスタート時に相手を追い出すか。4分前からそのために前に出ないように風位に立ててジッと我慢比べのように艇を静止させあっていた両艇は、お互い我慢ならずマニューバリング(2匹のヘビがお互いの尻尾を追うよう)に入る。スタートラインの本部船を障害物に利用しての戦いもある。そんなスタート前の駆け引きを3Dのコンピュータ・グラフィックでも2艇の航跡を示して解説してくれる。

 

     

スタート19秒前     6秒前(手前オラクル)   ジャスト・スタート!


スタートはほぼ互角とみたが、アリンギが艇速なくタック(風上方向転換)して

逃げていった。まずスタートはクリス・ディクソン(オラクルの艇長)の勝ち。


    

2タック後(下がオラクル) クリス・ディクソン艇長  オラクル少し遅れる


    

上り角度の良いアリンギ  オラクル艇を上から  上マークへの熾烈な並走


2タック後の永い永いスターボード(右舷側に風を受け)での帆走比べでは、アリンギが上り角度、スピード共に良くあっさりオラクルを逆転し、第1上マークでは47秒の差をつけて先航した。その後オラクルは2度とアリンギの前を走ることはなく、このスターボードでの力比べが決勝第1レースの全てであった。


   

沖でチームNZが練習中 クーツ艇長(アリンギ)    第1上マークへ


アリンギはスイスの製薬会社がスポンサーで、そこの艇長はなんとNZ人で前回のチーム・ニュージーランドの艇長をしていたラッセル・クーツだ。前回チームの手下を6人連れて退社してライバル会社に就職したようなもので、地元のNZ国民は決して許さないと言っている。家族や子供にまで脅迫電話が掛かっているらしい。そんな中で平然とレースを続けて、それもここまで勝ってしまうとは人並みの精神力ではない。NZにまともに帰れるのは本戦アメリカズ・カップでチームNZにも勝つことだけだというんだけど、そんなことしたらもっと帰れなくなるんじゃないかと心配してしまう。そんな彼を沖からチームNZがじっとみていた。


    

上マークを廻るアリンギ  風見クルー上がる    風下へ向かう2艇


  

じっと見ているチームNZ  第1下マーク回航  1分23秒遅れでオラクル

前々回のアメリカズ・カップからレース海面の風を見るためにクルーがマストに登るようになった。微風時が多かったが風向が変わりやすい、このハウラキ湾では今日のような順風時でも上がっているようだ。昔のヨットマンである私は勝つためには何でもするというのは賛成できない。マストに登らせている画は帆船の海賊船なんかを思い出させて、あまりカッコよくないんだなぁ。(船長、あっちにいい獲物がいますぜぇ! って感じ)


    

ハウラキ湾レース海面   先行するアリンギ     追うオラクル


  

フラー海運の観覧船   第2上マーク前のアリンギ  観覧船;アメリゴ号


レース海面のハウラキ湾は半島や島に囲まれてトリッキーな風が吹くようで、解説者が第2上マークまでの風の振れを説明している。完璧なカバーをするアリンギに手も足も出ないように見えるオラクル艇。オラクルのクリス・ディクソン艇長は昔、日本チャレンジの艇長もしたことがある天才スキッパーだ。しかし気難し屋でとかくトラブルの話が多い。今回も彼がチームに入るならと6人くらい辞めたらしい。だから、彼も勝たないと自分を証明出来ないようなところがある。

フラー海運の観覧船は懐かしい。前回のルイヴィトン・カップ観戦で私も乗って観た。その時はニッポン・チャレンジが活躍していたし、スイスはマストを折ってリタイヤしていた。変われば変わるものだ。


    

まだ追うオラクル      中継のヘリ      逃げるアリンギ

     
フィニッシュラインへ  アリンギ フィニッシュ  凱旋するアリンギ


         

        笑顔をみせるラッセル・クーツ艇長

レースはコース2周かと思ったら、3周だったが結果は同じだった。124秒差でアリンギが危なげなく第1戦を飾った。

(それにしてもフィニッシュラインは細い棒ですね。号砲もおばさんがライフル銃を撃ってる! さすがNZ)ベスト オブ ナイン(先に5勝した方が勝ち)だからあと4勝。クーツ艇長の笑顔は続くのか? 気難し屋な天才ディクソン艇長の巻き返しなるか? そしてアメリカズ・カップ本戦の行方は?

きな臭い戦争の心配よりもこんな心配をしていたい北半球の新春です。

それではまた。次回も平和なレポートを祈りましょう。


                 ソウルより 蒲谷敏彦−−


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