蒲谷敏彦Narrowな旅日記  

     KOREA REPORT (7月号)

―― キムチとミサイル (前編) ――

 

 ソウルは梅雨の真っ最中です。連日の雨に閉口しています。

日本の中国四国地方に停滞している梅雨前線が北上するとソウルが雨になります。南に下がるとソウルは晴れて日本は雨のようです。一心同体のような日韓の地理的関係を再認識させられる今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?

 


漢江がウインドサーフィンでいっぱいになる夏 中央日報から

 

梅雨のつかの間の晴れ間がのぞくある土曜日、漢江がウインドサーフィンでいっぱいになるという新聞記事を見つけて、勇んで出かけてみました。漢江を遡って行くとウインドサーフィンは見つけられませんでしたが、代わりにカヌー競技場を発見しました。88年ソウルオリンピック時に建設された漕艇場は、全長4500m巾120m深さ3mの人口湖で、一方にモーターボート競艇場、一方はカヌーの競技場になっています。

 



人口湖で練習するカヌー

 

夏の日差しを受けて輝く水面をパドルを左右に振りながら、一人乗りや四人乗りのカヌーが滑って行きます。原付バイクに乗った若いコーチが湖の沿道を走りながら、マイクでおらんでいます(コーチしている)。遠くの山々や近くの木立の緑が水辺に映えてきれいです。湖上を爽やかな風が吹き抜け、久しぶりに乗った貸し自転車をこぐ私の汗を乾かしてくれます。

 

 少し早いですが、暑中お見舞い申し上げます。

ところで、暑い夏、食欲がない、元気が出ないというとき、韓国にはとても良い食べ物があります。先日世界最高齢(70歳)でエベレスト登頂に成功された三浦雄一郎氏が帰国報告で、

『キムチが大好きなので、30Kgを持ってエベレストに登った。

山でキムチのチゲ(鍋)料理を作って食べながら体を暖めた。』

と語ったと、自慢げにこちらの新聞に載っていました。

 

キムチは今や世界的食品になって、SARSにも効くという説も流れた今年は、韓国からのキムチの輸出量が昨年同時期に比べて38%増えたそうです。日本への輸出はダントツ(2853万ドル;34億円弱!)で、米国(70万ドル)、台湾(29万ドル)、香港(12万ドル)の順です。中国本土へはまだ絶対量は少ないそうですが、SARSの影響で今年の伸び率は245%でこれからの有望消費地のようです。

 

キムチについては、次の書籍が写真入で詳しく判りやすく書いてあります。

『キムチは紀元前12世紀に興った中国の周時代から始まり、韓国には約2000年前の三国時代に伝来したとされる。ともあれ、ビタミンと無機質の摂取という人間の生理的要求は、塩漬けという野菜類の貯蔵法を開発して、冬を越す為の栄養源としての野菜確保に成功したのである。

 

韓国のキムチの初期は、大根を主材料にする塩漬けであったので、漬(チ)とよばれた。その後、白菜が伝わり、唐辛子が渡来し、塩辛を加える漬け方が開発されて、キムチは急速な発展を遂げた。朝鮮王朝時代に入り、塩漬けの野菜は汁の中に沈むので沈菜(チムチェ)と名付けられたが、チムチェ → キムチになったといわれている。今のところキムチは200余種類に多様化して、各々独特の香りと独特の味を伝えている。

―― 韓国料理キムチ 李在悦 李在恩 共著 ハンリム出版社から ―― 』

 

キムチをもっと知りたい、もっと見てみたいと、ソウル市江南(カンナム)の貿易センター地下2階にあるキムチ博物館にも行ってみました。

ここはプルムウォンという食品会社(もちろんパック入りキムチを販売している)が、運営している私設博物館です。キムチの歴史とキムチ文化、キムチの作り方や様々な種類のキムチとその効用が、蝋モデルで判りやすく展示されています。

 



キムチ博物館にてキムチをいただく

 

日本では白菜キムチが一般的ですが、こちら本場ではきゅうりのオイキムチ、大根のカクテギ、冷たい汁を飲む水キムチ、牡蠣やタコなど入ったキムチの王様ポッサムキムチなどいろいろあります。ソウル駐在の私でもまだまだ食べたことのない、キムチが沢山あって、この博物館で柿やナスのキムチもあることを知りました。是非一度食してみたいものです。

 

チョガク(総角)大根で作るチョンガーキムチは、大根の茎と葉が昔の独身男性の髪型に似ていることに由来するそうです。日本でも独身男性のこと、チョンガーって言うでしょ。これが語源だったんですね。秋のキムジャン(キムチの仕込み時期)の頃には白菜キムチが発酵するまで、先に食べられるこのチョンガーキムチで間に合わせるんだといいます。やっぱり若い男性はまだ熟れていないから...

 

キムチはビールやワイン、ヨーグルトと同じ発酵食品でいろいろ体に良いんだそうです。その効用について日本語で掲示してありました。

『 キムチの効果7か条

1.  キムチは乳酸菌たっぷりの発酵食品である

2.  栄養ドリンクと同様のスタミナ源がたっぷり

3.  美肌・ダイエット効果も高い

4.  抗ガン作用も認められる

5.  生活習慣病も防止する

6.  抗酸化作用により老化の防止も

7.  ヤンニョム(キムチの赤い汁)こそ栄養の宝庫である 』

キムチについてたっぷり教育された日本人でした。

 

近頃は激辛などと称して、日本人も随分辛いものを食べるようになりましたね。初めて訪韓された日本人の方が、何の躊躇もなく真っ赤なキムチや韓国料理に箸を伸ばす時代になりました。

中学生まで京都で育った当社の前社長が終戦直前に韓国に帰郷したとき、初めて食べたキムチがあまりに辛かったので気絶したそうです。(ホントか?) 昔は随分辛かったようです。

88ソウルオリンピック前に最初の韓国出張で昼食にカルビを食べた時、おまけについてきたキムチの数々に圧倒されて(昔は今よりもっともっとおまけのキムチがあったんですよ)、迷った挙句にあまり赤くない(辛そうにない)キムチを一口食べたのが、人生で一番辛い私の記憶です。

 

ソウルに赴任して一年くらいは、なるべく赤くない(辛くない)韓国料理(数えるほどしかないけど)のサムゲタン(雛鳥の腹の中にもち米、栗、ナツメ、松の実、朝鮮人参を詰め込んでスープで煮込んだもの)やソウロウタン(こちらは牛肉スープ)ばかり食べていました。韓国人はこの辛くない塩味の料理に先ほどのキムチの効果7か条にあるヤンニョム(キムチの赤い汁)を入れて、わざわざ辛くして食べます(当たり前か?)。

 

この夏は本場のキムチ探求に出かけられませんか?

入場料3000W(約300円)でキムチの試食もあって、冷暖房完備、ソウルの定番観光スポットはお勧めです。

キムチからどうミサイルに話がつながるのか?

素朴な疑問を残しながら、今日はここまで。

次回(後編)またお話しましょう。

 

           ソウルより 蒲谷敏彦

             
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