蒲谷敏彦KOREA REPORT 続10月号 

KOREA REPORT (続10月号)

―― 日韓詐欺商法比較考 ――

 

 大リーグワールドシリーズ、ヤンキースでの松井選手の活躍は嬉しい限りですね。一方、日本シリーズの阪神タイガースは星野監督勇退報道で牙を抜かれた虎みたいになっちゃいました。こちら、韓国でもプロ野球のポストシーズン真っ最中です。あまり日本では報道されていないと思いますので、少しばかり報告しましょう。

 

韓国プロ野球リーグは1リーグ8チームで年間133試合を戦って、上位4チームでポストシーズンに入ります。まずリーグ戦3位と4位チームが3ゲームを行い、先に2勝すれば3位確定。次にその3位と2位が5ゲームを戦い、3勝すれば2位決定。そして、1位2位が7ゲームの最終決戦をします。大リーグ並になかなかハードな試合スケジュールです。

 

現在、4位から勝ち上がった仁川(インチョン)のSK・WYVERNS(WYVERNSは龍らしい。SKは現代、LGに並ぶ大財閥企業グループで先頃、盧武鉉大統領の側近が10億W頂いたのはこのグループからでした)が、リーグ戦では80勝51敗2分けで1位になった牙山(アサン)の現代UNICORNSと優勝決定戦中で、2勝1敗で先行しています。SKの企業イメージが収賄疑惑で地に落ちたので、野球で名誉挽回しようと頑張っているんだと巷の噂です。どちらにしてもSKは目立つ。(因みにそれぞれSKに負けた、三星ライオンズは4位に、起亜タイガースは3位になりました)

 

 大阪からの督促状がソウルへ転送されてきました。曰く、

『この度、通知しております支払請求に付きましての回答及び、入金確認が、未だ取れていない為、貴殿名義の債権は日本債権機構により不良債権扱いとされ、今後全ての回収作業に関しましては、当社(債権回収専門業者)が引継ぎ行う事になりました。貴殿に対しましては、弊社顧問弁護士と協議の結果、本書到着日を期限とし、最終和解案を決定致しましたので、重ねて通知致します。   請求金額 \ XX,XXX-    上記請求金額を確認の上、至急連絡下さい!  云々 』

 

金田さんの携帯電話に連絡しない場合は、回収作業員が直接自宅、職場等に回収に伺われるそうで少し怖そう。不良債権や日本債権機構など流行りですかねぇ。今の日本を反映していますね。(ソウルまで来るのかしら?)

 

そのソウルの我が家の郵便受けに1週間前に、無料招待券が2枚入っていました。無料の字には何故か弱いので、読んでみると、

『北韓(プッカン;北の韓国つまり北朝鮮のことです)最高の俳優達が繰り広げる幻想の舞台、北韓から来た「統一芸術団公演」 

民族分断の痛みにお互いを激励しながら生きてきた我々南北同胞に統一の夢を抱かせ民族の叫びを再び思い出させる...北韓から来たピョンヤン芸術団公演に皆様をご招待致します。多くの方にご観覧頂きたいと思います。 』

 


『漢江の奇跡』の象徴63ビル(昔は黄金に輝くこのビルだけだったが)

 

大人2人まで、子供は入場お断りとも書いてあります。何か怪しそうだけど面白そう、北朝鮮のスパイに会えるかも?と、先日の日曜日の午後、お天気も良いので散歩がてら漢江市民公園(KOREA REPORT02年8月暑中お見舞い号参照)をてくてく歩いて元暁大橋を渡って、ソウルのマンハッタン汝矣島(ヨイド)の韓国一高い63ビル(1985年に竣工した日米韓合作の63階建てビルは韓国経済発展の象徴。韓国語で63はユクサンと読むところから韓国ではユクサン・ビルの通り名)まで1時間かけてやってきました。

 

『チャリ オプソヨ!(席がありません!)

夕方の公演に出直してください!』

63ビル1階の大公演ホールの前で男の人が両手を開いて、押し寄せるお客を止めていますが、皆北の同胞を一目見たいので、無視して押し通ります。私達もドサクサにまぎれてホールに入りました。

 

結婚披露宴のような部屋に500ばかりの椅子と貧相な舞台が作られています。白い衣装を着た妙齢の女性がマイクを持って唄っています。韓国語はあまり旨くないので、ご免なさい、皆さんもよく知っている北の歌を唄いましょう。なぜか謝謝(シェ-シェ-)と言う...

2曲ばかり歌うと女性歌手はさっさと舞台を降りて、変わりにデパートの実演販売のようなおじさんが、本当にオゾン空気清浄器の実演販売を始めました。(北のスポンサーだろうか?)

 


「統一芸術団」ならぬ空気清浄器実演販売

 

曰く、オゾンを発生させて水を殺菌、改良し、野菜を漬けておくと、農薬が溶け出して、ダイオキシン、アトピー、アレルギーに良いそうな。これも流行だなぁ。新聞広告で598千W(約6万円)のところ、今日は工場直送で半額の298千Wでご提供! テレビショッピングみたいになってきました。先ほど配った申し込み用紙に住所、氏名、電話番号、国民登録番号、何回月賦(10回払いまでいいらしい)を書けば、この場でオゾン空気清浄器をお渡しします! 係員が申し込み用紙を振りかざして、案外買う人がいるもので、40〜50台が瞬く間に売れてゆきます。

 

提供企業の宣伝はもう終わるか、もう終わるかと立ち見をしながら待っていると、舞台の貧弱な「統一芸術団公演」の横断幕はいつのまにか降ろされて、実演販売のおじさんは高級毛布の販売も終了し、次は薬局では売っていないという足の裏に貼る日本製サロンパスもどきの販売に入りました。酒やタバコを沢山やった夜に貼って寝ると、翌朝あーら不思議、パスが真っ黒になって、悪い成分が全部出ているそうな。これも7枚入り箱が通常2万Wのところ、今日に限り1万Wで販売するそうです。結構買う人がいるんですよ。

 

もう1時間も立って見ていたので、いいかげんアホらしくなってきて帰ろうかと思っていると、昔は有名なタレントを使ってテレビで宣伝したんですよ、でも誰も買ってくれない、今は皆さんにこうして集まってもらって直接売るから、宣伝料も中間マージンもかからない、だから安い!そうでしょう?とおじさん(社長らしい)は開き直り、聴衆は「統一芸術団」のことも忘れて、そうだそうだ!と言っています。

 

それでも舞台の陰には、付けまつげびろびろの白い衣装の女性歌手が次の出番はまだかと、マイクを持ったまま真面目に待っているのでした。夕方の公演まで出番はないと思うけど。

この公演(即売?)会場に日本人は私達だけだろうし、まして二村洞から1時間歩いて来たバカな客は他には居ないだろうと、家内と二人して大笑いしながら63ビルを後にしたのでした。

 

それではまた次回、間抜けなお話しましょう。

 

            ソウルより 蒲谷敏彦


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