2009 蒲谷敏彦CHINA REPOR 
蒲谷敏彦
(ぶたに・としひこ)

 今年4月から3度目の海外勤務。中国蘇州に赴任したビシネスマンの中国レポート。駐在員ならではの現地レポート。
松山では、MPRO、シンシアに乗るヨットマン



蘇州 Map


中国 Map


 

CHINA REPORT 2009

―― 想い出の2008年 (その1) ――

 

 寒中お見舞い申し上げます。

ここ蘇州でも昨日は春の陽気というとちょっと大げさですが、それでも小春日和?の暖かな一日だと思ったら、今日は今年一番の冷え込みで朝方は−8℃だそうで、昨年からの世界金融危機による世界同時不況のような急激な気温の下がり方です。早く気温だけでも上がって過ごしやすくなるといいのですが・・・

 

またまたずいぶんご無沙汰してしまいました。皆様お元気にお歳を重ねられたことと思います。今時分『新年好』(中国語であけましておめでとう、あるいは良いお年を!)というと少し拍子抜けかも知れませんが、こちら中国では今が本当の年末であと二つ寝ると本当のお正月(旧正月)春節です。当社の全社忘年会も新暦の117日に行なったのですが『2008年大忘年会』という看板が掲げてありました。2009年になって2008年忘年会というのも日本人的にはどうも妙な感じなのですが、中国人にとってはなんともないんでしょうね。この辺がダブルスタンダードというか、応用が利きすぎるというか、中国的なところであります。

 

ということで、改めてCHINA REPORTの20008年思い出版を今頃書いてみようと思います。激動の世界経済、激動の中国事情でありましたので大変遅ればせながらではありますが、記憶に残るように記録しておこうと思います。お付き合いください。

 


20081月大雪の蘇州(我が家の前の通り)

 

 2008年の今頃は中国では歴史的な大雪で春節前の帰省による民族大移動に大変な影響を与えました。華南地方のほうでは汽車(中国では汽車は鉄道ではなく自動車のことですが、ここではそのまま列車のこと)が動かず何十万もの人々が駅前で春節を過ごしたとか・・・ 交通ダイヤが乱れるとどこの国でも駅や空港で夜明かしする人が増えると思っていたら、それがわが身に降りかかるとはこの時は思いもしませんでした。

 

寒い時期は思いっきり寒いところに行こう! 春節に旧満州のハルピン〜長春〜瀋陽の中国東北3省巡りをしようと、上海国際空港の近くのホテルに前泊しようとしました。ところが、予約を入れておいたはずなのにフロントでは予約がないといいます。この辺からちゃちが付いたのですが、責任者を呼んで空いている部屋が無いというのを無理やりどうにか空けさせて泊まりました。翌日早朝のハルピン行きの飛行機に乗るためにホテルのバスで空港に行くと、どうにも変な雰囲気です。春節前なのにチェックインカウンターの前がガラガラに空いています。普通なら長蛇の列のはずが・・・ ハルピン行きのチェックインをすると担当者は普通に荷物を預かってチケットを渡した後!少し遅れているので空港前から出るバスに乗れといいます。飛行機に乗るのにバスに乗れとはこれいかに? あとで分かったことですが、前日までの大雪で中国国内外便は飛行機のやりくりが出来ず、航空ダイヤも乱れに乱れてシドニー〜上海便などは1日遅れ、名古屋〜上海便なども前日はキャンセルになったんだそうです。

 

バスに乗ると飛行場を離れて走りに走り小一時間離れた、3流ホテルに到着しました。航空券と引き換えにホテルの部屋のキーをフロントでもらって、部屋の中でくつろげというわけです。これはどうも空港が飛行機待ちの乗客で溢れたり、興奮した乗客達で暴動騒ぎにならないように近郊のホテルやレストランに隔離する作戦のようです。この辺は暴動慣れ?している中国らしい戦術です。まあ、なにせ人口が違いますから一旦大勢で騒ぎだすとなるとなかなか手がつけられません。

 

どうもこのホテルは上海〜ハルピン便の乗客ばかり集めているみたいです。無料の昼食をホテルのレストランで取っていると、オーストラリアから帰省してきた中国人やドイツからやってきた親戚やもちろん上海からハルピンに帰省する中国人家族がいろいろ情報交換しています。この大雪で飛行機の手配が付かず、上海からまず北京に飛んだ飛行機が上海に帰ってきて、それが瀋陽に飛んでまた上海に帰ってきたら、それでやっとハルピンに飛ぶんだそうで、午後6時くらいになるだろうとのこと。ホテルに3時ごろ迎えのバスがくるとか。

 

が、一向にそのバスが来ません。ホテルの部屋でテレビを見ていると扉を叩く人がいます。航空会社のスタッフではなく同じ便の乗客仲間です。ロビーに皆で集まるといいます。1階に下りてみると乗客達が100人くらい集まっています。乗客代表が中国東方航空に携帯電話をかけていろいろ聞いてみますが、どうも埒があきません。このままでは今日のことにならない、どうしても今日帰らないといけない人もいる! 一致団結して航空会社にかけあおう! そうとなればこんなホテルにいてもダメだ! 航空会社のバスを待っててもダメだ! 私たちで空港に行こう! そうだそうだ! 

 


極寒だけど雪はないハルピン市内

 

『我要回家!我要回家!(ウォーヤオホイジャー!=私たちは故郷に帰るぞ!)』

『5613! 5613!(ウーリューヤオサン!=これは上海〜ハルピンMU5613便のこと。5613便の同志は団結せよ!とういうところか)』

 

全員で右手を上げてシュプレヒコールを唱和します。私たちには遠い昔の団体交渉ですが、中国人たちは慣れたものでシュプレヒコールもなかなか様になってリズムも良く、気分は高揚してゆきます。で、団体交渉をするためにタクシー乗り合いでまた空港に行くことになったようなのですが、中国語が不自由な私たちはついて行くのが精一杯です。

 

皆がそれぞれに気勢をあげながらホテル前でタクシーを停めて次々に出発しますが、私たちはオロオロするばかりです。そんな時故郷のハルピンに帰省するというご一家が、この人たちは日本人で中国語がよく分からないみたいだから皆で助けてあげましょう! と言ってくれたのでどうにか一緒にタクシーに乗れました。涙が出そうです。

 

空港に着くと皆で中国東方航空のチェックインカウンターに行きます。全員が揃ったところで責任者を出せ! 私たちの飛行機を早く準備しろ! 全員が乗れないとダメだ! 団体交渉の始まりです。

 

『我要回家!我要回家!(ウォーヤオホイジャー!)』

『5613! 5613!(ウーリューヤオサン!)』

 

先ほど練習?したので私たちも慣れたものです。知り合いの日本人が居ると恥ずかしいのですが、ここは春節前の上海空港です。周りの野次馬まで応援してくれますが、カウンターの向こうには武装空港警官が並んできたりしてちょっと物騒になってきました。そうこうしてると、とうとうお偉いさんのような責任者が出てきて、9時には飛行機を準備できるのでもう少し待って欲しい旨説明しているようです。それじゃ、搭乗口に行くぞ〜と戦況好転したので勝手に53番搭乗口に5613便の同志たちはぞろぞろと転戦です。もちろん私たちはついて行くだけですが。

 

そして、本当に同志たちのために特別に準備したのか、ハルピン行き5613便は15時間遅れで飛び立ち、真夜中には極寒(24℃だった)のハルピンに無事?到着しました。一日この団体交渉騒ぎでつぶしたので憧れのハルピンの氷祭りは見えなかったけれど、大変貴重な体験をした2008年春節(2月)なのでした。

 

               ・・・想い出の2008年 (その2)に続く

第12回:

 
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