蒲谷敏彦KOREA REPORT  6月号 -3 

KOREA REPORT (W杯特別号 延長戦前半)

 

ソウルに夜の小雨が降っています。

韓国は、こんな雨では鎮火しそうにありません。

漢江の辺に花火が上がっています。W杯期間中は毎日曜日夜8時30分から9時まで、

韓国、日本、中国など6カ国の美しい花火の競演があります。

昨夜は特別にスペイン戦祝勝の花火が上がりました。

今週火曜日にはイタリアに延長戦の末、2−1で勝ち、

昨日はスペインと延長戦を終えて0−0でしたが、PK戦で勝ってしまいました。

 

先回のKOREA REPORTで報告したように、日本も韓国も

決勝トーナメントに進んだので、韓国人社員たちと犬肉鍋を食べながら、

『日本はトルコで楽勝ですね』

『韓国はイタリヤなので...』

『そんなことないよ。こうなったら、横浜(決勝戦)か 大邱(3位決定戦)でマンナジャ!(会おう!)』

と話し合ったとおり、とうとう韓国はベスト4になりました。(残念ながら、日本は約束を守れませんでしたが)

 

ということで急遽、KOREA REPORT(W杯特別号)も延長戦を戦うことにしました。


街路樹に吊り下げられた韓国必勝の短冊祈願

 

『ミドゥルス オプソヨ (信じられません)』

LG日立でソフト制作の仕事をしている、李ヒョンピル(30歳)さんは我が家の玄関に入るなり、昨夜の喜びをこう表現しました。彼は知り合いの紹介で1年前から、家内に日本語を週1回習いに来ています。日曜日の朝9時30分過ぎにやって来て、昼までフリー・トーキングをしながら日本語を鍛えていますが、今朝は1時間も遅刻しました。(家内はそれでも、FORZA COREAと書いてある応援マフラー?を貰ったので大変喜んでいます。)

昨日は、昼から仕事を置いて新村(シンチョンは若者の街。東京でいうと原宿かな)のホップ屋(大衆生ビール屋)に友人と集まって、韓国VSスペイン戦をTV観戦したそうです。アジア初のベスト4に進出して、それから夜の2時まで延々と

『テハンッミング(大韓民国) チャチャッチャ、チャンチャン 』

を絶叫していたらしい。私の住んでいる二村洞(イーチョンドン)でも車のクラクションが深夜までうるさかったのですが、李さんも友人の車に乗ってクラクションに合わせてエールをしていたそうです。(92年製の現代自動車のソナタだったので、クラクションの音色がイマイチだそうで、チャチャッチャ、チャンチャンをクラクションでするには双龍自動車のジープ型RVコランドか、バス!がいいそうです。特にバスは低音で重厚な雰囲気を醸しだすといいます。)


街頭応援に向かう人々を乗せた市内バス38番

 

実は私達も昨日は街頭応援の様子を偵察に行きました。市内バス38番に乗って試合開始前3時間頃に中心地に向かいましたが、その頃には既に市庁舎前や光化門前は交通規制が始まり、市内バスまで路線を変更して運転しています。街頭応援会場の近くに停車するバスからは次から次に赤いTシャツや太極旗を纏った若者が降りてきます。10人に9人はこのような応援スタイルなので普通の人はずいぶん肩身が狭いというか、何ともいえない恐怖も感じます。万年筆を買いに出たのですが、文房具店でも商売をしているような状況ではありません。いつもなら見てるだけでもすぐ近寄ってきて売りつけようとする店員がボケーっとしています。大手の文房具店にも行きたかったのですが、応援会場の真っ只中にあるので諦めました。(後で聞いたところによると、街頭応援は全国で500万人、ソウル市庁舎前だけでも80万人の人出でした)

 

その後私達はまた、バスに乗って帰宅しTV観戦しました。その頃、李さんはホップ屋で応援していたのですが、隣の知らない女性がPK戦のとき、

『今度は韓国のコーナーキックだ!』

と言っているので、PKの説明をしてあげたそうです。韓国ではFK(フリーキック)もCK(コーナーキック)も勿論、オフサイドも判らない女性やおばさんが心から韓国の応援をしていたのです。街頭応援の半数以上が若い女性です。(李さんもお母さんや妹にオフサイドを何度も説明したけど、結局判らないと言っていました)

韓国がPK戦(韓国語ではスンブ・チャギ(勝負・蹴ること)というらしい)で勝った瞬間、李さんはCKと言っていた見知らぬ女性と思わず抱き合っていたそうです。(羨ましい)

 

李さんとのフリートーキング

『韓国がベスト4に進出した、今の気持ちは?』

『スペインは本当に強いのに幸運と赤い悪魔の応援で勝てました。信じられません。』

と謙虚です。

『日本についてはどう思いますか?』

『今回のW杯で韓国と日本が近づいたように感じます。韓国がスペインに勝ったとき日本が喜んでいたのが、とても嬉しかった。』

NHK解説者が横浜の決勝にオセヨ(いらっしゃい)と語ったと、こちらの新聞に載っていました。

 

トルコはのらりくらりとセネガルに勝って、4強に入りました。ここに日本が居たらどんなに良かったことか。ブラジルに負けてドイツに負けた韓国と大邱で3位決定戦か、両国が勝って横浜で決勝戦か、本当に夢のような話でしたね。(でもこれ以外の組み合わせは少し怖い) 返す返すも残念です。(残念だというのは、韓国語でアシプタというんですが、これは期待が少ない残念がりようで、韓国人からみた日本の敗退をアシプタと表現して、韓国がゴールを逃したときには、アンタカプタという表現になるそうです。これは本当に残念、ジダンダ踏むというような状況でしょうか。すると韓国が負けたときにはアンタカプタの2乗になりそう。)

 

6月25日は、これまで朝鮮戦争勃発の日として歴史に残っていましたが、韓国VSドイツ戦がある今年は観戦のため(といっても夜の8時30分からなんだけど)に国民の休日にしようかと政府で検討を開始したとの情報が入ってきました。こんな韓国がもし勝って、横浜に乗り込んでいったら日本にいる日本人はどんな対応をするんだろうかと、韓国在住の私は少し心配になってきました。

そんな心配や、韓国の勝利への世界の反響などいろいろ次回のKOREA REPORTでまたお話しましょう。  (W杯特別号 延長戦後半につづく)

 

ソウルより 蒲谷敏彦

            バックナンバー02.6月号w杯特別号後編